(旅のつづき)
次の日、日頃東濃人に与えられていない海を楽しもうと近くの浜辺に向かう。
ホテルが用意してくれた護送車並に愛想の無いベンチシートを持つミニバスで運ばれたは、iPhoneのWe mapによれば、マラッカ海峡と地図にある海の端。
その浜にあるのは「Tomato Bar」と段ボールの看板を出している掘っ立て小屋と、
寝そべったまま、スマートフォンを小枝の先っぽで突ついている男が一人だけ。
他にお客は無く、どうやらバーテンダーも兼ねた管理人らしいその男は、私たちに近付きもせずゴニョゴニョと風が強いので気を付けろとかなんとか。
指を挟まれそうになりながら浜長椅子の角度を調整、砂混じりのここへどうやって身を沈めようかというときに、後ろからニュッと差し出された赤いバスタオル。
波が気配を殺して男が側に来たことに気が付かず気分は刺されたも同然だ。
押し寄せる波の壊れかたは半端ではなく凄まじい。 ビーチパラソルは鉄棒に連結して砂中深くに突き立ててあるのだが、傘を開いた途端根元から発射しそうになった。
楽しいはずの浜遊びがなんか一気に怖くなる。
しばらく繰り返し押し寄せる波のパターンを見ていたのだが、
砕け方が全部違っていることに気が付き、そのことがなにかの実験のようで気に入らない。
それほどまでにしてこの世の中のありようを繰り出されても、今日の物語は休息でなければならない。
いつも海に来たら感動してから始まる「アレ」が今日はやってこない。
ビールが飲みたいがここにはないので、ビールを求めて南へ移動することにした。
(つづく)
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