13回目の夏
ルナが死んで13年になる。 もう15年くらい前になるかな、当時妻が務めていた会社の同僚の家の近くにずっとつなぎっぱなしの犬がいて、家主も引っ越したか夜逃げしたかでずっと留守で、近所の小学生から給食の残りのパンをもらって生きている、という話しを聞かされた。 どうしても気になった僕らはある夜、自宅から50km以上離れているその犬がつなぎっ放しにされている団地まで見に行った。 もし、あの時、あの子が吠えなかったら連れて帰っていただろうか? その日の夜はそんな悪い妄想と自責の念が消えなかった。 だが、それ以上考えて辛くなるのはいやだから、きっとその内飼い主が戻ってくるだろう、あるいは誰か引き取り手が現れるだろう、と僕も妻もお互い良い方向に考えるようにして、あの日以来あの子の事は思い出さないようにしていた。 それから数ヶ月後、その日は妻が会社を辞める日。 「ねぇ、今から保健所行ってあの子引き取ってくるから!」 「お、おう、え、えっ?なんで」 「とりあえず帰ったら説明する」ガチャッ。 それから数時間後、あの子を車に乗せ彼女が帰ってきた。 妻が会社を辞める日、同僚にあの子があれからどうなったか聞いたらしい。 そして、あの子は我が家の「ルナ」になった。 それから2年、ルナはウチで家族として生きた。 だけど、13年前の今日、なんの前触れもなく急に逝ってしまった。 朝から元気がなく、暑さのせいかなぁ〜、なんて思ってたんだけど、急に息が荒くなり、容態が急変。 このまま安楽死させるか1%の可能性に賭けて手術をするか 僕らは後者を選んだ。 結果は・・・。 二人して涙が枯れるくらい泣いた。 原因は肝硬変 以前の家でまともな食事を与えられていなかったのが原因なのか野良犬時代の食生活なのか、持病なのかわからないが、とにかくルナは逝ってしまった。 今でもあの時の選択は合っていたのかどうかわからない。 だけど、ルナと一緒に過ごした2年はたった2年だけど、僕達にとってかけがえのない一生消えることのない時間になった。 あの日も今日みたいに暑い日だった。 ▼記事が気に入ったら是非「いいね!」をよろしくお願いします。
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