2014旧正月:何を買う?ベトナムシャッター街そぞろ歩き

STK(サトコ)

STK(サトコ)

2003年よりシンガポール移住。現地マスコミでジャーナリスト、デザイナ、写真撮影など。日本食グルメ堪能に目無し、最近の美食探訪記事: http://www.soshiok.com/article/22159

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1年に一度しかない3連休祝日に、もう一日有給をぶら下げてベトナムは首都のハノイへ足を伸ばした。

 

日系旅行代理店でツアーを組んでいたのがH社だけで「残席僅か!」などと謳ってあるものだから、取りも直さず入金に走ったら、シンガポール人日本人を問わず友人らからは「何が悲しくて旧正月のベトナムへ行くのか、彼らは道教徒だよ、正気?!」と非難轟々。

 

思い立ったが吉日で動く直感思い込み人間だから、つゆ存じませんでした、とほほ。ベトナムの旧正月は、何週間も祝日になって、ここぞとばかりに家族が集いに集います。特に元旦からの三が日に買物旅行なんてもってのほか。デパートもお店も見渡す限りシャッター、鉄格子、シャッター、鉄格子が永遠と続く、無色彩鉛色のオンパレードでございました。

 

「地球の歩き方ベトナム版」片手に「ここのシルク専門店のお店行きたいんですけど」と現地ガイドに拝むように訴えるシンガポール駐在員の奥様方に、「うーん誰も電話でないね」携帯電話で一応は確認してくれるベトナム人ガイドは慈悲深くて有難かった。が、この行き場を失った買物欲は宙に浮いたままで、20人乗りツアーバスの中のショッピング万歳日本人(少なくとも私)は、出陣待ちベトナムドン札やアメリカドル札で膨れ上がった財布を持て余し、さあ一体この予期せぬ事態からどう脱却すべしと、思案に尽きて互いに顔を見合わせるばかりのお買い物難民でありました。

 

そうは言ってもフリータイム。ベトナムくんだりまで来てホテルに引きこもってるなんて有り得ない、取り敢えず街に出る。

 

「ネジ通り」「ブリキ通り」「文具通り」「小物洋裁通り」、閉まってるよ閉まってるよ、約2メートル間隔で犇(ひし)めきあう灰色のシャッターは容赦無く、無垢で無知な私たちをようこそ!と冷たくあしらってくれる。「オモチャ通り」では現地の幼児らのお年玉の目当てか僅かに店を開けていて、広大な砂漠の中でオアシスに辿り着いたかの如く、万歳買物チャンス到来!とトキメキ感が俄かに胸に打ち広がったものの、アダルトの私よ子供玩具屋で一体何を買うというのか。

 

それにつけても、クサイ。

1時間もシャッター通りを彷徨い歩いた末には鼻の穴真っ白だか真っ黒に染まりそうであった。 通りに所狭しと並ぶ店々は軒並みまるで仮死状態なのに、商店街を縦横無尽に展開する車道はどこもかしこも移動するバイクバイクでブイブイ騒音を繰り広げることひっきりなし、蔓延する排気ガス、気管支関係絶対ヤバイ、ゲッホンゲッホン。

 

長居してはろくなことがないと、踵を返してホテルに舞い戻ることにした。

 

バイクの少ない比較的静かな横道に身を滑らす。と、前面ガラス張りで室内の壁に水色のペンキを施した小さな楽器屋らしき店が、その細いドアを内に数十センチ開き放してあるのに気がついた。

中を覗き込むと、長白髪を後ろで一つ縛りにした体格のがっしりしたおばあちゃんが20センチ高のプラスチック椅子に腰をかけていて、何かの乾燥実を口に放り込みながら「何用か」とばかりに不満げな顔をこっちに向ける。

 

「あー開いてますか見てもいいですか」日本語、英語、中国語通じない。身振り手振りも通じない。YAMAHAとCASIOの1メートル長のキーボード箱が所狭しと立ち並び、天井からはギターが綴らなりにぶら下がっていた。隅の埃の被ったショーウィンドウに佇(たたず)むメトロノームを指して「あれが欲しい」と言う。「壊れてないか確かめたい」、カバーを外して左右に揺らそうと試みる。が、針はちっとも動かない。困った困った言葉の通じない私たち首をひねるばかり。

 

そうするうちに、おもむろに彼女はむくりと立ち上がったかと思うと、外に飛び出し、道行く人を誰これ構わずひっ掴まえてかたっぱしから訊問!「@#$#@#@^%#@#@?!」(このメトロノームはどう動かしたらいいんじゃ、もしやお主ご存知か?!、と意訳してみた)

 

・・・その後の展開はご想像におまかせとして、メトロノームはどうなったかって?

 

はい、買いました買いましたおばあちゃんへの同情買いメトロノームUS57ドルなり、他に買うものがなかったというのが包み隠さぬ本音です。

 

皆様どうか旧正月にベトナムに向かうのだけはお避けくださいませ、、、

 

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